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フランスに「PICARD:ピカール」という冷凍食品専門チェーンがある。
1992頃からのデータだが、毎年10%の成長させ続け、2004年の年商は8億ユーロ(約1100億円)、冷凍食品の商品開発・デリバリー・小売まで一貫した事業を展開している企業だ。フランスの統計データでは都市部に住む25歳〜49歳の女性の約80%が働いている(日本以上にフルタイムで働く女性が非常に多い)。組織小売業の成熟したフランス市場でGeomarketingを展開し彼女たちから強く支持され成長を続けている。
@明確な顧客ターゲット像
●都市部の25歳〜49歳の働く女性・・「質を落とさず食事の準備・買い物を簡単に」
・家族構成(世帯人員数)
・人種(アジア・アフリカなど多様な人種が生活している) など
・食品購買行動(消費データ・嗜好など)
ピカールは、デモグラフィック分析を深く行い、商品戦略・価格戦略・生産戦略・流通戦略・販促販売戦略を具体的に検討し意思決定できるレベルまで徹底して行っている=Geomarketing。
A徹底したターゲット顧客向け商品戦略・製造戦略
●約1000種類の冷凍食品・・素材から半加工・加工食品・デザートまで
・販売:魚介20%・野菜20〜30%・肉20〜30%(全て冷凍食品)
・2人用〜ファミリー用まで必要量のパッケージングの商品が揃う
・ここ数年、アジア系・アフリカ系などの料理の加工品が成長している
欧州も食品スーパーに行けば生鮮食品が圧倒的にメインの売場を占めているなかで、生鮮食品ではなくて、PICARDは全て冷凍食品である。
働くパリジェンヌからの評価は、「ピカールの野菜、魚、肉は新鮮な素材。
種類も多いので、いつも利用している」、「素材の皮をむいたり、切ったりする手間がはぶけてとても便利」といったコメントも多く、「冷凍でもおいしい」というものだ。
素材の鮮度にこだわり加工冷凍し、使い切る量を家族構成に合ったパックを用意し・・・・冷凍であっても店頭だけでなく家庭での保存・使用方法などにわたって気遣った鮮度管理は重要だ。原産地での素材の鮮度管理・加工鮮度管理も重要である(製造戦略)。
ピカールは、商品開発と流通・マーケティング・小売事業を行なう会社で実際の製造は食品加工・冷凍食品メーカに発注、というビジネスモデルである。委託製造メーカーのほぼ4分の3はフランスの会社で、4分の1が他の欧州と南米系だ。
アジア系・アフリカ系の料理の加工食品も、地域のデモグラフィック特性の詳細な分析から数値だけでなく質的なものも読み取っている。
顧客の声もフィードバックされ、地域のデモグラフィック特性を分析した結果から顧客の声のマーケットポテンシャル(市場の可能性)を経営判断できる定量的裏づけをし、商品化の経営判断しているのだろう。
B価格戦略
●素材、加工品の値段は手ごろ。とくに、野菜や魚貝類は、生鮮品の価格の半額に近いものもある。
素材の鮮度にこだわれば、契約栽培の農家や漁協(日本的な表現だが)があり加工・冷凍も産地で行われ直接納入されるのだろう。
1次産業の農業・漁業が産地で加工・冷凍し直接納入することができれば産地の付加価値(利益)も高まるだろう・・・・日本でも地方の活性化が課題になっている。委託製造メーカーのほぼ4分の3はフランスの会社で冷凍食品の鮮度管理・品質管理を高めながら、価格メリットが出せている。
Cターゲット顧客層の密度に合った販売ミックス戦略
●パリ20区だけで、80店舗(東京23区のような)
・イル・ド・フランス全体で、250店舗(パリ郊外:東京近郊都市の
ような)
・北イタリアの都市部で、45店舗
●電話とインターネットによるカタログ注文配達
・年間延べ10万人の利用
・ロンドン、ブリュッセル(ベルギー)は、電話とインターネットによ
る通信販売を2003年より開始
店舗数だけ見ると日本のコンビニエンス・ストアのような出店のように思えるが、日本でエリア・マーケティングを駆使してコンビニエンス・ストアを出店している以上に、ピカールは、Geomarketingを徹底して地域のデモグラフィック特性の詳細な分析を行い出店している。
でなければ、冷凍食品としての商品が良くて家事に便利で安くても、食品スーパーの生鮮食品とは戦えない。働く女性が仕事帰りに便利なパリ市内の約80店舗の多くは、メトロ(地下鉄)駅からも近距離で足場のよい場所にある。どこの駅でも全て出店する対象と考えるのではなく、日本でも事業所統計等で細かな地区別に事業所数・業種・男女別従業員数などのデータもあり、フランスでもそのようなデータ分析もしているのだろう。
電話とインターネットによるカタログ注文配達で、利便性だけでなくターゲットとしているデモグラフィック特性の顧客密度が高くない出店カバーできないところにもサービス提供している。
日本でもインターネット通信販売が注目されているが、クリック&モルタルが成功している。主要な出店可能地域で現物接触できる店舗があり(モルタル)、ターゲット顧客層から強い支持を受けその評判(ショップ・ブランド力)で通信販売をも成功させるという、定石を踏んでいる。
このようにPICARDは、日本以上に組織小売業の成熟したフランス市場で「Geomarketing」を展開し、ターゲット顧客層から強く支持され成長を続けている。
(資料:ピカールのhpアドレス http://www.picard.fr/ 、
潟xンチャーリンク:WebマガジンNextOne第13回パリ発フランスで根強い人気冷凍食品専門チェーン「ピカール」)
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マーケティング原則では、ニーズやベネフィットで市場をセグメントし、セグメントのター
ゲット顧客を明確にして、ターゲット顧客に適したマーケティング展開を行わなければな
らない。
しかし、どの商品を購入するかを顧客の多くは来店前に決定してはいない・・・・およそ
2/3以上は店内で決めている。
「販売は営業・営業店の仕事」、組織上メーカーのマーケティング担当・組織小売業の本
部担当からは「営業・営業店」は独立している。
マーケティングが完結するのは少なくとも、「販売の現場」=店頭であるはずだ。
ターゲット顧客は商品購買の前に店舗を選択している=販売の現場である店舗を基軸
に商圏内顧客を中心に据えた、販売の現場まで通用するマーケティングが必要ではな
いか。
「Geomarketing」は、販売の現場を差別化するマーケティング・ツールとして活用すべき
ものだと考える。
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