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■マーケット・ポテンシャルで市場セグメントする
色々な、知的生産性改革の手法は提唱されている。それらをベースにした営業支援システム(SFA)やCRMなどシステム導入も盛んだ。
営業・販売の知的生産性を向上させるノウハウの共有化も進んでいるが、ノウハウの共有化によってどの程度成果が上がっているだろうか。
販売・営業の知的生産性改革のためのノウハウ共有化の成果を左右するものとして、共有化するノウハウの「ノウハウ展開実施する標的顧客層」・「ノウハウ展開実施で効果の上がる標的顧客市場のニーズ(欲求)・ウォンツ(購買力)」が明確になっていることが重要である。
どの販売の現場で、どのノウハウを展開するのか?
営業・販売の現場は、担当エリア・店舗商圏にある。メーカーや卸売業の営業担当の担当エリア内でも、各取引先の販売拠点(店舗)の商圏の顧客構造は異なる。どの取引先の販売拠点でどのノウハウを展開するかは、商圏の顧客構造によって選択されるべきものである。
各取引先の販売拠点の過去の販売実績から、重点商品は選択でき商品の売込みは出来るだろうが、有効な提案営業をするには商圏の顧客構造とマッチした売場作りの提案が必要になるが提案材料不足だろう。
SFAなどは商圏情報を提供するものもある。営業担当者が提案営業に活用できるように工夫されている。同じ様な顧客構造の商圏の取引先の販売拠点での販売ノウハウが簡単に引き出せればいいが、そこまで出来ているものはまだ多くはないようである。
まだまだ、売場作りの提案営業をするには各営業の経験則に頼らざるを得ない状況である。
各取引先の販売拠点を商圏マーケット・ポテンシャル(MP)によって分類しておくことが出来れば、同種の商圏MPの売場作りの販売ノウハウを共有化し効率的に有効に提案できるようになる。
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取引先の販売拠点の商圏マーケットポテンシャルは、全市場を代表するデータでよい
から「顧客属性別の1世帯あたり年間購買量・金額」と「商圏エリアの顧客属性構成」か
ら推定できる。
各取引先の販売拠点を商圏MPによって分類するには、
@同種商品群の商圏内の需要規模(商圏需要力)
A 〃 1世帯当たり年間購買金額(商圏購買力)
B商圏エリアの顧客層構成(顧客層の密度)
を軸にして行うと良い。
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需要規模だけではなく、ニーズをウォンツにするその商圏の顧客の購買力と、その商圏に購買頻度・量の多い属性の顧客がどの程度多くいるかという顧客密度を加える。
デモグラフィック特性で、顧客層を捉える必要があるのは、その市場商圏での販売機会の可能性の高さ=MPを推定するには、オープンデータで商圏の属性別の顧客構成が捉えることができなければならない。
サイコグラフィック特性では、商圏分類できない。商品開発のアイデア探索などのニーズ分析ではサイコグラフィック特性が重要である。商品訴求・店頭演出のための分析にはこのサイコグラフィック属性のニーズ分析が有効である。
・・・・次の段階のノウハウ開発のための顧客理解には重要である。
営業・販売のための市場分類には、デモグラフィック特性が適している。
1) デモグラフィック特性の購買傾向を明らかにする
商圏とする地域の、世帯・人口の年齢構成・世帯年収等によって商圏ポテンシャル(可能性)は大きく違ってくる。需要・ウォンツとして顕在化している消費支出の内容の差を見ていくことにする。
消費財の消費支出データは総務省統計局「家計調査」がある。耐久消費財の保有状況等は「全国消費実態調査」、このほか「家計消費状況調査」などもある。(総務省統計局HP http://www.stat.go.jp/ )
ここでは例として、「家計調査」のデータを使いセグメント要素について考察してみる。(平成15年家計調査)「2人以上世帯」と「単身世帯」に分かれるが、データ内容も充実し特に「単身者」にターゲットを絞り込む意図ではないのでここでは「2人以上世帯」で行うことにする。
データ分析・検討行う前に、対象の基本属性を把握しておく。
平成15年の「家計調査」は図表2-3のような調査対象属性になっている。
世帯年間年収・世帯主年齢の属性別に、商品群別・商品品目別にどのような傾向があるかをデータを「読取り解釈する」には、属性の背景にあるデータも考慮しなければならない。
最低限この家計調査(2人以上世帯)では、次のような調査対象の基本属性に関する与件がある。
@年収が高い階層ほど、世帯人員数・有業人員が多くなっている。
A年収最下層には世帯主60歳以上の世帯が多く含まれる。
B世帯人員は40代がピークを形成している。
C有業人員は50代がピークを形成している。
このことを踏まえて以下の点を考慮し分析・検討する。
●世帯年収は、高給所得者かどうかよりも、収入のある家族の多さが反映されている。収入のある家族が多いのは50代(子供は独立しはじめ世帯人員数は減少)・・消費行動の変化の時期、自分のための支出増加。
●世帯人員は40代に多く、収入のある家族(主に妻)が増えはじめる・・家族の暮らしを支える収入・子供など家族のための支出増加。
●世帯年収は、500万円を超え始めると家族有業人員が増加している・・世帯年収500万円以上と以下の層で消費パターンも変化しないか注意が必要。
●世帯主平均年齢は、世帯年収365万以下が高く60歳を超え、世帯主年齢60代以上は大きく世帯人員が減る(子供は独立し夫婦世帯が増加)・・収入は多くないが自分のための支出が主になる。
世帯年収・世帯主年齢等のデモグラフィック特性(ライフステージ特性ともいえる)による、需要・ウォンツとして顕在化している消費支出の差を次に分析して行く。
@食品分野
基本的な食品の分野も、世帯年収(世帯人員も考慮必要)にやや比例し世帯主40代(家族構成も考慮必要)がピークを示す商品群と、50代・60代以上の高年齢者世帯がピークを示す商品群に大きく分けられる。(ここでは一部の食品群を取り上げている。)
「主食調理食品類」・「乳卵類」のようなものは、どの世帯収入層・世帯主年齢層にもほぼ同じように消費される食品群である。
一方、「菓子類」・「他の調理食品」・「生鮮肉」は、40代を中心にした年代層の支出が高い傾向を示している。60代に比べ40代のこの3群の支出金額は25%多い。世帯年収とも相関が高く、基本属性にあったように主に妻などの働きによる収入増加がある世代である。
また逆に、「生鮮野菜」・「鮮魚」・「果物」・「米」・「酒類」などは、50代・60代以上の高年齢者世帯の支出が高い傾向を示している。40代に比べ60代は、
「生鮮野菜」・「鮮魚」・「果物」の3群の支出金額は50%以上も多い。
世帯有業人員は50代が2.00人から60代は1.19人に減少し世帯収入が減少し、世帯人員が3.37人から2.62人に減少しても、60代のこの食品群の消費金額は減少していない・・・・消費量は減っても自分の消費したいものなら単価の高いものでも購入しているのが見える。(生鮮肉の50代も同様の傾向が見られる。)
全国平均の世帯収入を主に支える人の年齢は、30代が約29%、40代が29%、50代が21%、60代以上が17% となっている。
各世代1ポイント構成比率が変化すると、その世代の数の増減は3%〜5%も変化する。店舗商圏の地域差は大きい・・・・集客コミュニケーションや店舗レイアウト・MD・インショップロモーション等、どの層の顧客に対する販売を強化するかで大きく収益性も変わる。
たとえば、「酒類」や「菓子類」のメーカー・卸売業等の企業も、棚割りや店頭提案をするために、どのような商圏の店舗をターゲットに行うかで大きく成果も異なってくる。重点商品の販売強化も同じである。
GMS・SMの大手組織小売企業については、「食品」分野で店舗規模の差によるMDの差はあるものの、基本的に同程度規模店は全国一律で集客コミュニケーションや店舗レイアウト・MD・インショップロモーション等の差はあまりないのが現状だ。
A衣料品等
「婦人服」「婦人カジュアル」は50代が大変支出が高い。全国平均の世帯収入を主に支える人の年齢は、50代が21%、世帯有業人員数は50代が2.00と一番多く、世帯人員が40代の4.00人から50代は3.37人に減少している。衣料関連は自己表現要素が強く、家庭だけでなく女性が社会再進出する50代(40代を含め)は重要なターゲット世代と読取れる。しかし、この世代にターゲットを置く組織小売業はまだ少ない。やや大きめのサイズの衣料でこの年代の支持を受けている百貨店は出てきている。
40代・50代この各世代1ポイント構成比率は、数の増減は3%〜5%も変化し、店舗商圏の地域差は大きい。集客コミュニケーションや店舗レイアウト・MD・インショップロモーション等、どの層の顧客に対する販売を強化するかで大きく収益性も変わる。特に衣料は、売場作り・MDコンセプトが大変重要な要素となる。(衣料品専門店に勝てずにいる)地域分けの特性は、「世帯年収の多さ」・「40・50代の多さ」が大切になる。
メーカー・卸売業等の企業は、商品開発・ブランド開発、棚割り(コーナー展開含め)や店頭提案をするために、どのような商圏の店舗をターゲットに行うかで大きく成果も異なってくる。ある。この世代を満足させられる商品・販売の提案が現在あるだろうか?
Bカー用品等
部品・用品・整備費用をトータルでみると、50代が一番年間支出多いが、車の「整備費用」が大半である。
タイヤ・バッテリー等の「部品」関係は30代・40代・50代が年間支出が多く、カーナビ・カーAV等電装機器・オイル・洗車用品等の「用品」関係は20代・30代の年間支出が多い。
カー用品の組織小売業は、50代の支出が高い「整備」の分野等を強化しようとしており、カーディーラーとの競合を強く意識しはじめている。カー用品の組織小売業は、タイヤ・バッテリー等の「部品」は50代も消費額大きくこの商品群は扱っている。
世帯年収の高い層が多く50代の顧客層の多い地区の店舗(店舗商圏の地域差がある)この条件に合う店舗で、この層に向けた集客コミュニケーションや店舗レイアウト・MD・インショップロモーション等この層の顧客に合った販売強化を図れたら大きく収益性も変わる可能性がある。
カー用品の組織小売業は、店舗規模の差によるMDの差はあるものの、基本的に同程度規模店は全国一律で集客コミュニケーションや店舗レイアウト・MD・インショップロモーション等に大差はないのが現状だ。20代・30代が多い地区店舗と40代・50代が多い地区店舗では違うはずだ。
C家事用品等
Dg.s ・HC等(DSも含め)組織小売業の各種業態が入り乱れているのがこの商品群の特徴だろう(
DSは外し検討する)。 GMS・SM・HC・Dg.sとも 「家事用雑貨」・「家事用消耗品」など、どの世帯収入層・世帯主年齢層にもほぼ同じように消費される商品群は扱っている。
Dg.sは、医療・健康関連用品を核にしながら、「理美容用品」も充実している。「世帯年収」の高い層ほど消費支出金額が高く、「世帯主年齢」が40代・50代の支出が高い。40代は世帯人員が多く「家族の理美容用品」と女性の社会再進出も始まり、50代は世帯人員が減少し衣料と同じく女性が社会再進出する世代で「自分の美容用品」が中心と読取れる。
女性も働き「世帯収入」が高く、50代の比率の高い地域なら、美容用品・美容関連の健康用品で差別化が図れるが・・・・店舗規模の差によるMDの差はあるものの、基本的に同程度規模店は全国一律で集客コミュニケーションや店舗レイアウト・MD・インショップロモーション等に大差はないところがほとんどであるか、違う年代を狙っているのが現状だ。
HCは、清掃用具・洗濯用具・家庭用工具など「その他家事雑貨」は30代をピークに「世帯年収」の高い層ほど消費支出金額高い。電動工具等の「その他家事用耐久財」などは60代がピークになっている。
ハード系商品は一般客よりもコンストラクター向け需要が大きいだろう。
「ペット用品」「ペットフード」「園芸用品」は、「世帯年収」の高い層ほど消費支出金額が高く特に890万円以上の層が非常に高い、「ペット関連」商品群は50代・「園芸用品」は60代の消費金額が突出している。
50代は仕事につく女性も一番多く世帯収入が増え子供も手が離れ「ペット」を可愛がりペットへの支出も多くなり、子供が独立し世帯人員が激減する60代は新たな暮らし作りで「園芸」への支出が増加すると読取れる。
40代・50代の多い地区のDg.s は再社会進出する40代・50代の「美容用品・美健関連」で業態競争の差別化はかれるマーケットポテンシャルがある。50代・60代の多い地区のHCは「ペット関連・園芸」業態競争の差別化を図れるマーケットポテンシャルがある。店舗商圏の地域差は大きく条件に合う店舗で、この層に向けた集客コミュニケーションや店舗レイアウト・MD・インショップロモーション等この層の顧客に合った販売強化を図れたら大きく収益性も変わる可能性がある。
Dリフォーム等
注目される分野だが社会的問題も表面化している。(特に機能回復型)50代・60代・70代以上の世帯のリフォーム支出額が圧倒的に高い。
SK等の住宅設備機器を伴うものは、住宅メーカー・住設機器メーカー等のチャネルがインテリアコーディネーター・リフォームコーディネーター等を育成し取り組んでいる・・・・「暮らし提案型リフォーム」。
有業人員も多く子供も独立した50代から、高齢者世帯の60代以上の人達は、「外壁等の工事」・「その他工事」も非常に高い支出をしている。
大手の組織の事業取り組みが比較的少なく、訪販等の中小事業者の中には不適切な販売を行っていることもある。「終の棲家」としての「機能回復型リフォーム」この分野は、顧客接点(販売の現場)が十分育っていない。
HCのなかには、住設機器を並べ芳しい成果を上げられずにいるところもある。商品を並べて販売する程度で、外壁塗装や耐震補強など含め専門知識を持つ人材を配置して販売方法を革新する必要がある。
全国平均の世帯主年齢の構成比は50代が21%・60代以上が17%。これ以上に比率の高い地域・地区で、かつ「戸建・持ち家住宅」の比率が高い商圏を持つ組織小売業の店舗・住関連企業の流通や協力工事業者を持つところはマーケット・ポテンシャルが高いのだが需要を受ける接点が未成熟だ。
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販売の現場で具体的展開につなげやすいデモグラフック特性例示してきたように「世帯
年収」「世帯主年齢」というデモグラフィック特性だけでも、消費支出の傾向がこれほど異
なる。
このことは、販売の現場の「店舗」のマーケット・ポテンシャルは、その商圏地域の顧客
デモグラフィック構造によって、大きく異なることを示す。
マーケット・ポテンシャルに適した「差別化戦略」を展開するために、
@各店舗の商圏のデモグラフィック特性でタイプ分けし、
A重点ターゲット顧客層を明確にし、
B集客コミュニケーションや店舗レイアウト・MD・店頭コミュニケーション・インショップロ
モーション等を重点ターゲット顧客層に合ったマーケティング展開をする・・・・・・・・ことは
有効なアプローチといえる。
組織小売業だけでなく、販売を完結する場が組織小売業である「消費財メーカー」「商
社・卸売業」も本部交渉で全店導入ではなく、販売提案する商品群のターゲット顧客と
合った、商圏デモグラフィック特性がどのタイプの個別店舗名称を提示し棚割り・店頭コ
ミュニケーション・インショッププロモーション等を提案すべきである。
デモグラフィック特性は、売りの現場の「店舗」の商圏データからマーケット・ポテンシャ
ルを分析し狙うべきターゲット顧客層を明らかにし、ターゲット顧客層に対する重要な商
品がどれかを明確に出来る。・・・・・・現場ではデモグラフィック特性が具体的な施策が立
案でき展開しやすい。
顧客のニーズは、重要な商品の抽出過程である程度推測でき、テストマーケティング段
階で顧客の生の情報や行動観察・インタビューでより深く理解できるようになる。
サイコグラフィック特性は大切だが、「販売の現場」ではデモグラフィック特性のほうが具
体的展開に利用しやすい。
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